いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「あの…私たちが此処にいたのが悪かったんですか?」

そもそも領主邸宅は、一般市民が気軽に入れる場所ではない。

美月はそれが気に食わなかったのではないか。

「あんまり気にしなくていいよ。彼女は誰にでもああなんだ」

そんな態度を取っていても、京や周は美月を咎めないのだろうか。

あの態度を帳消しに出来る程、彼女は優れた手腕を持つ秘書官なのかも知れないが。

「――京」

そんなことを考えていると、その周が陸と共に戻ってきた。

「父さん、それに…」

「あ…あのっ……にい、さん」

京がどう声を掛けようか躊躇していると、先に陸が遠慮がちにそう口にした。

「陸」

「俺、さっき…父さんや兄さんに酷いこと…」

先程のことを謝罪しかけた陸に、京はゆっくりと首を振って見せた。

「…いいよ。お前はそれだけ不安だったんだろ?僕なら全然平気だよ、お前の兄さんだからね」

「兄さん」

兄に優しく笑い掛けられ、陸も気恥ずかしそうに笑った。

「強いて言うなら、昔みたいにお兄ちゃんって呼んで欲しいけどね。…あ、冗談だよ?」
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