いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「え……っと…」

行く宛ては――何処にも無い。

かと言って、いつまでも此処に留まる訳にも行かない。

このままでは二人に世話と迷惑をかけるだけなのだから。

しかし晴海と同じ碧い眼が、陸の心中を推し量るようにじっとこちらを見つめていて身動きが取れなかった。

「思いっ切り、ないって顔してるね。よし陸、怪我が良くなるまでうちにいなよ」

「っいや、そんなつも」

「ああ、気にしないでいいから。うちはあたしと晴だけだし、見るからに食の細そうなあんた一人くらい、増えたってどうってことないから」

「でも俺」

「ていうか怪我人なんだから、治るまで大人しく怪我を治すことだけ考えな。こっちだってこんな怪我人を途中で放り出したら気掛かりで仕方ないよ。ねえ晴?」

「うっ…」

反論しようとした声は、悉(ごとごと)く仄の言葉に掻き消された。

困り果てて助けを求めるように晴海を振り返ると、晴海は戸惑いがちながらも嬉しそうに微笑んだ。

「私も……陸がいてくれたら嬉しいな」

「………、…」

どうも自分は、恩人のこの笑顔に弱いらしい。

「…すみません、引き続きお世話になります……」

「はいはい、どういたしまして。話したくないことはあたしらも余計な詮索はしないからさ。怪我が良くなっても、好きなだけ此処にいればいいよ」
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