いとしいこどもたちに祝福を【前編】
気が付くと、目の前には夕夏の姿があった。

辺りを見回すが窓も帳もきちんと閉じてられいて、外からは陽の光が漏れ入ってきている。

「大丈夫?魘されてたみたいだけど…」

心配そうに顔を覗き込まれ、晴海は小さく頷いた。

「ん……へいき…」

「疲れてたんじゃない?昨日も色々あったし」

よしよしと夕夏に頭を撫でられ、ぼんやりと惚けていた思考が徐々に覚醒していく。

あれは夢、だったのだろうな。

「ところでさ、朝ごはん食べたら買い物行かない?」

「あれ?昨日も行ったのに?」

「君とは行ってないだろ?君、春雷に来たのは初めてだって言ってなかったっけ」

「うん、初めて」

「じゃあ行こうよ。実は昨日さ、君に似合いそうな可愛い服が売ってる店があったんだ」

…成程、目的はそれか。

でもまあ自分は女だし、女同士で買い物をして歩きたい、という夕夏の願望に付き合うことは寧ろ自分にとっても楽しい。

陸が女装をさせられることになるより、いいか。

「賢は荷物持ちだから連れてくとして…陸も誘って行こう?」

…あれ、ちょっと陸も危ないかも。


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