いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「…記憶を失ったままの陸に極力負担を掛け内容にってことでね、此処での生活に慣れてから公けにすることになったんだ。それまで陸には、窮屈な思いをさせてしまうんだけど」

そう説明してくれた京は、少し複雑そうな顔をしているように見えた。

「そ…っか。大変だね、陸」

折角戻って来たのに、自由に外を出歩けないのはなかなか大変そうだ。

とはいえ陸の容姿はやはり色々な意味で目立つため、致し方ないことかも知れないが。

「俺は平気だよ。家の中だけって言ったって凄く広いんだし、別に不自由なんてしそうにないしさ」

京とは対照的に、陸は然して気にしていないようだ。

「……ところで、晴。買い物から帰ってきてからでいいんだけど…大事な話があるんだ。聞いてくれる?」

ふと、陸が声の調子を落としてそう訊ねてきた。

「大事な話…?」

妙に改まった言葉に驚いて、その眼を見上げたが、陸は黙って頷くだけだった。

なんだろう――少し、胸騒ぎがするようなこの感覚。

でも、陸が何か伝えようとしてくれているなら、聞きたい。

「うん…わかった」

「…有難う。晴が帰ってきたら俺、晴の部屋に行くよ」


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