いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「あ…有難う、ございます」

「よろしくね、陸」

こちらの事情を聞かない、というのは自分にとって非常に有難い話ではあるのだが。

何故、こんなにも簡単に受け入れてくれるのだろうか。

自分は晴海を偶然助けることが出来ただけなのに。

「あ、でも女二人だからって変な気は起こすんじゃないよ?」

そう告げて、仄は意味深な含み笑いをして見せた。

「母さんっ、陸はそんなことしないよ!…けど陸、うちの母さん、大柄な男の人相手でも投げ飛ばせるくらい強いから…怒らせないように気を付けてね?」

「う、うん」

…肝に銘じておこう。

何より、晴海が寄せてくれる信頼を裏切りたくない。

彼女の碧い眼に、恐怖や憤りの色など宿らせたくない。

もし自分にそんな眼差しを向けられたら、きっと耐えられないだろう。

「ところで、俺の着替えって…」

「ああ、あたしがさせてやってたんだよ。流石にお年頃の娘には、あんたの着替えは無理みたいでね」

「…!」

(まさか、とは思ったがやっぱりそうか…)

いや、これは逆に晴海ではなかったことに安堵すべきなのだろうか。
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