いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「……っ」

この国の人々に、手出しさせる訳には行かない。

しかし、今はまだ晴海の居場所も判っていないのに、雪乃に応じる訳にも行かない。

どうすれば、いい――

「陸!!」

そのとき、不意に名を呼ばれて陸は顔を上げた。

夕夏と賢夜が、こちらへ走ってくる姿が見える。

「あいつら、炎夏にいた奴ら…?!きゃあっ!!」

「!」

二人に気を取られている隙に、雪乃の身体が突風に煽られて吹き飛ばされた。

次の瞬間、其処には雪乃と入れ替わりに少女を抱えた金髪の青年の姿があった。

「女の子相手に手荒なことはしたくないけど…弟やこの国の住民に手出しするなら、手加減はしないよ」

「兄さん!」

雪乃へ向けた冷ややかな表情から一変して、京は少女に優しく微笑み掛けた。

「きょうさま…!」

少女も嬉しそうに、涙に塗(まみ)れた笑顔を京に見せた。

「やあ、迎えにくるのが遅れてごめんね里砂ちゃん。お邸でお母さんが待ってるよ」

「うんっ…あのね、きょうさま…あのおめめのあかいおにいちゃんが、りさのことまもってくれたの」
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