いとしいこどもたちに祝福を【前編】
里砂、と京に呼ばれた少女は、陸に向かって嬉しそうに手を振った。

「陸っ、良かった追い付いて…!もう、どうして一人で飛び出して行っちゃうんだよ!」

駆け寄った夕夏が、安堵しつつ責めるような口調で叫んだ。

「っ…ごめん」

「おにいちゃんのことおこらないで!りさをたすけてくれたんだからっ!」

「へっ?」

背後から咎められ夕夏が拍子抜けした表情で振り向くと、屋根から降りてきた京と共に少女がこちらへ駆け寄って来ていた。

「まもってくれてありがとう、おにいちゃん」

「えっと…うん、どういたしまして。無事で良かったよ」

そう告げてまた頭を撫でると、里砂は頬を染めながら笑顔を見せた。

「おにいちゃん、きょうさまとそっくりね?なんで?」

「このお兄ちゃんは、僕の弟だよ。だからそっくりなんだ」

「ほんと?!じゃあ、おにいちゃんがりくさま?かえってきたの?きょうさま、よかったね!」

「うん、有難う。里砂ちゃんはいつもそのことを気にしててくれてたね」

「うんっ!りくさま、おかえりなさい!」

「…!」

こんな小さな子供までもが自分のことを知っていて、帰りを待っていてくれていた。

そのことは何だかむず痒いけれど、とても嬉しかった。
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