いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「…陸、お前はこのままこの子と一緒に邸まで戻れ。みんなを邸の敷地内に一時避難させてる、其処にいる母親の元へ里砂ちゃんを連れて行ってくれ」

「!でも…」

まだ晴海の居場所が判らない。

この街の何処かにあいつと一緒なのか、それとも――

「晴海ちゃんは僕たち三人で必ず探し出す、お前は母さんと父さんの傍にいるんだ」

「――駄目だよ陸。あいつの娘、探してるんでしょお?」

くすくすと笑いながら、雪乃が再び頭上に姿を見せた。

「雪乃、お前…っ」

京に吹き飛ばされて多少傷を負っているものの、然程気にも留めていない。

「さっきはそっちのお兄さんに不意を突かれちゃった…そのお兄さんも陸くらい綺麗だからまあ許せるけどぉ」

「雪乃、晴が何処にいるのか知ってるんだろ!?一体俺に何をさせる気だ…!!」

声を荒げる陸の様子に雪乃は満足げに笑うと、つと遥か先に見える大きな時計塔を指差した。

「彼処に、いるよ?才臥の娘……陸が行かなきゃ、あの女を陸の代わりに連れて帰っちゃうよ。あたしは願い下げなんだけどなぁ」

晴海を連れて行く――月虹へ?

「何、で…っ彼女は能力者じゃない!月虹に連れて行っても何の意味もないのにっ」

「嘘。だってやっぱりあの女、風弓の双子の片割れなんでしょ?だから使い物にならなくなった風弓と取り替えるんだよぉ!」

「風弓…!月虹の奴ら、風弓に何をした!?」

「あははっ、もう教えてあげない!気になるんならぁ、陸が月虹に帰ってくればいいんだ!」
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