いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「…もしかして、あのとき暁が遮ったのはそのことか?」

「え!?」

賢夜の言葉に、夕夏が驚いた様子で振り向いた。

「…暁は、晴海の親父さんが生きてることを知ってたのか」

「いいや、先生は俺の話の途中で気付いただけだよ。あのあと俺と二人だけのときに、詳しい事情は解らないけど、晴にその話はしないほうがいいって言われたんだ」

だからあのとき、晴海に父親のことを告げようとした瞬間に遮られたのだ。

「…仄さんは、知ってたの?君と何か話した?」

「判らない…改まって話をしようとすると、いつもはぐらかされてしまって。けど、きっと何か感付いてはいたと思う」

でもきっと仄の願いはただ一つだけ――

『私の大切な子供たち…どうか、無事で』

今此処で晴海を連れて行かれる訳にも、風弓を父親の二の舞にさせる訳にも行かない。

「晴を助け出したら、今度こそ俺の知ってることを全部話す。だけど今は頼む、先に行かせてくれないか…?」

「………」

狼狽する夕夏と、険しい表情のままの賢夜。

無理もない――二人をずっと信頼していなかった、と告げてしまったようなものなのだから。

二人はずっと、自分を助けてくれていたのに。

――しかし暫しの沈黙の後、不意に二人に両側から腕を掴まれたかと思うとこう告げられた。

「…解った、行こう」
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