いとしいこどもたちに祝福を【前編】
17 割拠の内の逡巡
「最初の願いはただ、それだけだったんだ」
「ん…」
誰かの指先が頬を撫でたような気がして、沈んでいた意識が急浮上する。
「――気が付いたか」
すると、目の前で見知らぬ男がそう問い掛けてきた。
「だれ…?」
頭が痛くて、身体が重い。
上手く回らない呂律で訊ね掛けると、相手はくつくつと喉を鳴らして笑った。
「俺に、見覚えはないか?」
逆にそう問い返われ、男の容貌をゆっくりと眺める。
肩口まで伸びた、胡桃色の髪と菫色の瞳――
「あなた、は…」
夢の中で、窓辺からこちらを見ていた青年だ。
「また逢ったな、晴海」
男はこちらを見つめて、夢と同じように笑みを浮かべた。
その口から思いがけず名を囁かれ、身が竦む。
「!どうして私の名前を知ってるの…?!それに此処は…」
辺りを見回すと、見覚えのない薄暗い殺風景な部屋に、自分と相手しかいないことに気が付く。
「此処か?春雷の街にある、時計塔の天辺だよ。外に出ればでかい時計盤が間近で拝めるぜ」
誰かの指先が頬を撫でたような気がして、沈んでいた意識が急浮上する。
「――気が付いたか」
すると、目の前で見知らぬ男がそう問い掛けてきた。
「だれ…?」
頭が痛くて、身体が重い。
上手く回らない呂律で訊ね掛けると、相手はくつくつと喉を鳴らして笑った。
「俺に、見覚えはないか?」
逆にそう問い返われ、男の容貌をゆっくりと眺める。
肩口まで伸びた、胡桃色の髪と菫色の瞳――
「あなた、は…」
夢の中で、窓辺からこちらを見ていた青年だ。
「また逢ったな、晴海」
男はこちらを見つめて、夢と同じように笑みを浮かべた。
その口から思いがけず名を囁かれ、身が竦む。
「!どうして私の名前を知ってるの…?!それに此処は…」
辺りを見回すと、見覚えのない薄暗い殺風景な部屋に、自分と相手しかいないことに気が付く。
「此処か?春雷の街にある、時計塔の天辺だよ。外に出ればでかい時計盤が間近で拝めるぜ」