いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「はあ…ごめんね、陸。うちの母さん、ちょっと変わってて」

寝台の敷布を取り替えてくれながら、晴海は苦笑いを浮かべた。

「そうかな、面白い人だと思うけど」

聞けば、自分が気を失った場所から此処まで運んでくれたのも仄らしい。

見た目は晴海よりも幾分背が高いくらいで、自分より腕も細いように見えるのだが。

しかし不本意ながら自分も男としては華奢な部類に入るため、もしかしたら純粋な腕力では仄と互角か負けてしまうかも知れない。

「あ、そろそろ夕飯の支度しないと。陸は何か食べたいものある?」

そして仄よりも更に細腕の晴海は、それでも手慣れた様子で作業を進めてゆく。

「…家のこと、みんな晴がやってるの?」

「あ、うん。今日はちょうど非番だったけど、母さんはいつも朝から夕方まで仕事に出てるから。家事は私がしてるの」

…しかし何の警戒心もなく、仄の不在な時間帯を明かしてくれて良いのだろうか。

(これは…信頼してくれているのか、男として意識されていないのか……)

後者だったらどうしよう。

「本当は私のほうが働きに出るべきなんだけど…私、小さい頃に病気がちだったせいでちょっと人見知りで」

「そうなんだ」

「うん…人と話すのも、あんまり得意じゃなくて。でも、陸と話してるのは何だか楽しいな」

そう言って、晴海は嬉しそうに顔を綻ばせた。

(まあ、そう言って貰えるならいいか…)
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