いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「!」

目の前に、二つの人影が立ちはだかった。

「此処から先は、進ませない」

「お前は、俺たちが連れ戻す」

「…葵、茜」

陸に名を呼ばれた男女の二人組は、同時に目を細めて笑みを浮かべた。

「月虹にいた頃は、演習でお前に勝てた試しはなかったが…」

「俺たち二人が一緒で、今の弱ったお前が相手なら…勝てる」

金属性の能力者である双子――単独で相手取るのも厄介だが、二人掛かりとなると更に手間取る相手だ。

「あれれ…このお二人、君のことしか眼中にない余り私たちは完全無視だよ?」

「俺たちは能力者としては三下だからな…舐められても仕方はないだろうけど」

「納得するな!ねえ陸、ちょうど二対二だしさ。この双子は私らに任せて、先に行っててくれない?」

双子は完全に能力に頼り切った戦法を得意とする。

能力に頼らず体術を得意とする夕夏と賢夜のほうが有利だろうが、双子は多方面から相手を取り囲む攻撃を好む。

魔法を使われれば、同等の魔力で跳ね返すしか防ぐ手立てはない。

「夕夏、でも俺も一緒に…」

「余り時間はないんだろう?なら此処は陸だけでも先に行け」

「賢夜、俺はっ…」
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