いとしいこどもたちに祝福を【前編】
何も隠してなんかない、何も嘘なんて言ってないって、そう言い返して欲しいのに。

どうして、黙ったままでいるの――

「お前が言いたくないのなら、俺が教えてやるよ」

香也は陸の反応に満足したのか、晴海の首から手を離してこちらに向き直った。

「晴海、お前の父親と弟は事故で死んでなどいない。…だが父親は最近までは生きていた、と言うのが正しいか」

――父と、風弓が、死んでない。

「最近まで、って…何?」

「お前の父親、才臥 充は薄暮の兵器開発施設・月虹に属する研究員の一員だった。だから俺は勿論、其処にいる陸も、お前の父親のことを知っている」

(父さんが、月虹の研究員…?!)

そんな、そんなこと。

「…っ知らない……!!父さんがそんなっ…私、知らない!!」

「お前には知らせなかったらしいな」

「どうして…っ?陸も…っそのことを知ってたの…!?だったらどうして、今までっ…」

「言える筈ないよなあ、陸」

香也は笑いながら、視線だけを陸のほうへ向けた。

陸は何も言わず、ただ俯いている。

「り…く……?」

「奴はな、月虹から逃げるとき才臥を見殺しにしたんだよ。お前の父親は生きていたのに、陸のせいで死んだんだ」
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