いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「っ吹き飛べ!!」

しかし巨石は、陸が咄嗟に放った鎌鼬に細切れに寸断されて砕け落ちた。

香也が再び掌を翳すと、今度は鋭い氷の刃が陸の四方八方を取り囲む。

陸目掛けて刃が縦横無尽に飛び交うも、陸の両手が真っ赤な光に包まれると燃え上がった焔に溶かされて霧散した。

「ふん、そこそこ力は戻ってるみたいだな…だが、これじゃ全然足りない」

陸の力量を測っていたのかのように、香也はそう呟いた。

その戦い振りは、単なる能力者には到底見えない。

どう見ても、先程から複数の属性魔法を駆使している――まるで陸と同じように。

まさか、京は陸以外には存在しないと言っていたが、香也は陸と同じ体質なのか。

「貴方は…陸と同じ、なの…?」

恐る恐る訊ね掛けると、香也は微笑を浮かべてこう言った。

「俺は、魔道士だ。精霊に頼らなければ碌に魔法も使えない霊媒師とは違う」

「魔…道士……?」

「そうだ、晴海」

再び香也の手が頬を触れる。

「いやっ…」

「晴に、さわるなっ…!!」

晴海に気を傾けていた香也は、陸が放った突風に不意を突かれて跳ね退けられた。
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