いとしいこどもたちに祝福を【前編】
すると陸は、少し困ったように首を傾げた。

「前はもっと、長かったんだ。俺はずっと短くしたかったんだけど、きちんと切る時間がなくて…」

「もっと長かった、の?」

陸は顔を顰めたまま首を縦に振った。

それ以上は話したくなさそうだったので追及しなかったが、ちょっと意外な話を聞いてしまった。

「…俺、あんまり自分の髪が好きじゃないんだ」

「……どうして?」

「………」

すると陸は何か口にし掛けたものの、結局何も言ってくれなかった。

――言いたいことがあるのなら、言って欲しい。

そう、言えたらいいのに。

上手く声にすることが出来なくて、結局その言葉を飲み込んでしまった。

(でも何か…何か言わなきゃ)

物凄く気まずい雰囲気に陥ってしまっている気がする。

「わっ…私は好きだよっ?陸の髪…」

「え」

慌ててそう口走った瞬間、俯きがちだった陸が弾かれたように顔を上げた。

何故そんな複雑そうな顔をするのだろう。
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