いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「だって、初めて見たとき凄く綺麗だと思ったんだもの」

「…綺麗?俺の髪が?」

素直に初対面時に感じた想いを伝えると、陸はきょとんとして首を傾げた。

「うん、陸の銀髪、綺麗だよ。だから切っちゃうなんて勿体ない気がして」

その言葉を受けて、陸は暫く怪訝そうな顔付きのまま静止していたが、そのあとにふと小さく笑みを零した。

「そんな風に言って貰うの、初めてだ。……何か嬉しいな」

折角誰もが綺麗だと思うような銀髪の持ち主なのに、それを今まで誰も陸に伝えたことはなかったのだろうか。

「有難う、晴。でもやっぱり後ろは長過ぎるから、もうちょっと短くしたいんだ」

「そっか…じゃあ、ごはん食べたら私が散髪用の鋏で切ってあげるよ。自分じゃ切りづらいでしょ?」

晴海は時折、自己流ながら母の髪や自分の髪を切ることがある。

陸の髪を切り揃える程度なら何とか出来そうだ。

「うん。…お願いするよ」

「待っててね、急いで夕飯作っちゃうから」

そう告げてくるりと流し台に向き直り、陸に背を向ける。

「わっ…!」

直後に、陸が小さく声を上げた。

「陸、どうしたのっ?」
< 35 / 367 >

この作品をシェア

pagetop