いとしいこどもたちに祝福を【前編】
父が月虹に関わっていたことさえ昨日まで全く知らなかった自分が、彼らと対面することで傷付いてしまわないかと。

でも――

「大丈夫。私、平気ですよ」

「晴海ちゃん」

陸がまた此処に帰って来られるように、自分の出来ることなら何だってするんだと。

そう、決めたんだから。

「…相手も知ってる顔に似ている人間がいれば、何か話をする気になってくれるかも知れませんし」

彼らと風弓がどの程度親しかったのかは、不明だが。

「うん…君に来て貰おうと思ったのは、僕もそう考えたからなんだ」

「…今の弟が私と似ているのかは判りませんけど、子供の頃は姉妹だと間違われてましたからね」

きっと今でも、面影くらいならば残っているだろう。

すると京は少し複雑そうにゆっくりと瞬きをしてから、小さく頷いた。

「…じゃあ、行こう」

「はい」

京が扉を叩くと、開かれた扉の向こうから一人の男性が現れた。

彼は緋色の眼をしていたが、髪は炎夏の民のような漆黒の色をしている。

「お早うございます、京様。間もなく処置が完了致しますよ」

「上手く行きそう?」
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