いとしいこどもたちに祝福を【前編】
上手く行くか、とは一体何のことだろう。

そんな疑問を抱えながらも、促されるままに室内へ足を踏み入れる。

すると急に周囲の空気が重たくなったように感じて、少し息苦しくなった。

――部屋の中央に置かれた椅子に、良く似た容貌の二人が眠っていた。

その二人の両脇に、其々一人ずつ男性と女性が付き添うように立っている。

傍らの男性と女性は眠っている二人に掌を翳しており、その手からは見覚えのある金色の光が溢れていた。

「京さん、彼らは何を…?」

「この二人には、陸と同じように制約の魔法が掛けられている。それを解除してるんだ」

「!」

陸を散々苦しめた、あの闇魔法――確か月虹の能力者全員にこの魔法は植え付けられているという。

周が陸に掛けられた魔法を完全に解除し切れなかったのは、魔法が進行し過ぎたせいだと聞いていたが。

「っかなり複雑な手順で施された術式のようです。一つでも解除の手順を違えると、すぐに発動する仕組みになっています」

男性の霊媒師が苦しげに息を付きながら京に告げると、それに女性霊媒師も続けた。

「こんなに危険で強力な魔法を、連れ去った子供たちに施すなんて…!残酷過ぎますわ」

「…貴方たちのような手練の霊媒師でも難しいだなんて。父でも迂闊に手出し出来なかった訳だ」

「じき、解除し終えます…!」

すると、陸と同様に痛みを感じたのか、赤毛の二人は表情を歪めて身動ぎした。

「うっ…」
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