いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「…葵は記憶、戻ってる?」

「戻ってる。茜も…一緒?」

「!」

「その記憶は、君たちが月虹に連れ去られる前の記憶のこと?」

京の問いに茜と葵は二人揃って頷いた。

月虹に消された記憶が、戻っている――?

「成程ね。あの魔法は記憶を封じる役割も果たしていたのかな」

茜と葵の眼の色に、あの月虹の能力者特有の冷たさが感じられないのはそのためだろうか。

「しかし、洗脳についてはまた別の筈だろう?まだ君たちには月虹の洗脳が掛かっているんじゃないのかい?」

「…おれたちは、洗脳を殆ど受けていない」

「月虹が一番正しいと思い込んでただけ…」

そういえば香也が言っていた。

洗脳を受けたのは、記憶を消されたあとも月虹に抵抗を示した子供だけだと。

「…けど、記憶が戻って漸く誤りに気付いた」

「あたしたちはこの街に、酷いことをした…」

春雷の街の惨状を思ってか、二人はつらそうに表情を歪めて俯いた。

「それなのに、おれたちを助けてくれたのか」

「あたしたちはあんたの国を、壊してたのに」
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