いとしいこどもたちに祝福を【前編】
それに、天地の栗色の髪や翡翠の眼と、夕夏の黒髪と金色の眼では似ても似つかない。

困惑して二人を見比べていると、夕夏はくすくすと笑った。

「あ、勿論実の親子じゃないよ?私は暁と九つしか離れてないし」

「九つ…」

成程、義理の親子という意味か。

そういえば以前、天地にちらりと家族のことを訊ねたことがある。

そのとき天地は「相手がいないのに子供はいるんだよね」と、妙なことを笑いながら話していた。

あれは自分をからかう為の冗談と思っていたのだが――まさか本当のことだったとは。

「で…でも私、母と数年前に此処に移って来たの。だけど、今まで一度も貴女を見掛けたことない」

母がこの国を引越し先に選んだのは、炎夏に住む天地を頼ってのことだった。

天地と母がどんな交友関係かは詳しく訊ねたことはないが、母は昔から顔が広いから然して気にしていなかった。

少なくとも、恋愛関連ではないらしい――それは以前天地から「そんな、とんでもない!」と全力で否定されている。

とんでもない、がどういう意味合いなのかは不明だが。

引越してきた当初からこれまで、何度も天地の診療所を訪れたことがあるのに、夕夏を見掛けたことは一度もない。

「うん。私はちょうど君とは入れ替わりに、この国を留守にしてたんだ。ある捜しものを見付け出すために」

「…捜しもの?」

「そう。各地を捜し回ったけど、一向に見付からない。それに、手掛かりも殆ど見付からなくてね。頼みの綱はあの、陸くんって訳」

「……貴女の捜しものと陸とに、何の関係があるの?」
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