いとしいこどもたちに祝福を【前編】
陸のために、出来ること――寝室で横になってからも延々とそれを考えていると、ふと天地の言っていたことを思い出した。

春雷の国へ行けば、陸を苦しめる魔法を解けるかも知れない。

それに、もし春雷が陸の故郷なら彼の家族も見付かるかも知れない。

炎夏から海を挟んで北東の大陸にある春雷は、一度も赴いたことはないが非常に大きく移住民の多い国だと聞く。

都心は炎夏と同じ湾岸地帯に広がる港町だが、その規模は比べものにならないらしい。

晴海にとっては炎夏の街でも十分賑やかなのだが、これ以上とは一体どれ程なのか、全く想像がつかない。

そんな国で人探しとなるとなかなか難航しそうだろうか、などとあれこれ考えていると、不意に隣の部屋から扉の開閉する音が聞こえた。

誰かが廊下を歩いている気配はしないので、恐らく庭に出ていったのだろう。

隣は陸の使っている部屋で、この部屋とほぼ同じ間取りならば庭に出られる戸口がある筈だ。

(…陸、まだ起きてるのかな)

陸のことが気に掛かって、晴海は身を起こすとその後を追うように窓際の扉から庭へと足を運んだ。

――月明かりに照らされた庭で、陸は芝生の上に座り込んでぼんやりと空を見上げていた。

何だか少々話し掛け難かったが、かと言って引き返すのも妙な気がしてゆっくりと陸の傍へ歩み寄る。

「…眠れないの?陸」

その背にそっと声を掛けると、陸は振り向きながら少し驚いたように眼を見開いた。

「晴」

「…それとも傷、痛む?」

その隣に腰を下ろすと、陸は困ったように小さく首を振った。
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