いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「なに、言ってるの…?」

唐突に投げ遣りな物言いをする陸に、驚いて問い質してみたが返答はない。

「…だって陸は風の能力者で……それに春雷の国には霊媒師が沢山いるんでしょ?陸は…陸もそう、じゃないの?」

「……!」

何となく訊きそびれていた、その質問を投げ掛けた瞬間、陸はびくりと身を硬くした。

「私は魔法のこと全然詳しくないけど…風の魔法で焔を吸い取ったり雨を降らせたり、氷を出したり出来ないことくらいは解るよ」

慶夜が口走った、“精霊を喚び出した”という言葉――

そして、天地から霊媒師の説明を聞いて漸く合点がいった。

「陸は、霊媒師でしょう?」

――だが陸は俯いたまま、晴海の問いに否定も肯定もしなかった。

「…ねえ陸。風の能力者も霊媒師も、両方とも春雷の出身に多いならやっぱり陸は…」

「違うんだ、晴」

陸は不意に顔を上げて、晴海の言葉を遮った。

「…俺は風の能力者だよ。でも確かに風以外の精霊を喚ぶ、所謂霊媒師みたいな真似も出来る。けど、霊媒師は能力者と違って魔力を持てないんだ。なのに俺は…風の魔力を持ってる」

陸は空を仰いだまま、他人事のように淡々と言葉を紡ぐ。

「本来有り得ない筈のこの力は…本当に生まれ付きの力なのか?誰かに造られたものじゃないか?月虹は複数の能力を持つ人間を造りたがってた。なら俺は…月虹の研究の試作品かも知れないじゃないか」

つまり陸は、自身の力は故郷を見付け出す手掛かりにはならないと言いたいのか。

「外見だって、どうにでも変えられる。晴が綺麗だと言ってくれた髪や眼も…偽物かも知れないんだ」
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