君の幻



『寒いんだろ?これ着とけ』

『いい、いらない

 ていうかこの寒いのにTシャツ1枚の奴と
 隣に並びたくない』

『大丈夫大丈夫、俺冬好きだし!』

『アンタが冬好きかどうかなんて話、してないわよ』


 冬場によくやったやりとりを思い出す

 人に甘えることがどうしてもできなくて
 冬吾にだってなかなか素直になれなかった

 
 だけど私が素直じゃなかったぶん
 冬吾はいつもストレートに愛情表現してくれて
 
 それにもあんまり上手く答えられなかったけど
 それでも、冬吾といるときしか
 安心することができなかった



『本当に日本は窮屈だわ
 
 アリスからもパパに頼んでちょうだい、
 国に帰りましょうって』


『アリスって駆け落ちしてできた子なんでしょ?

 だから人の好きな子も簡単に取っちゃうんだ!
 ほんっと遺伝ってこわいよね~』


 口癖のように
 自分の愛した人の生まれた国を蔑むママも

 ハーフというだけで
 好奇心や嫉みの対象でしか私を見ないクラスメイトも

 みんな敵にしか見えなかった




 
 
 



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