赤ずきんは狼と恋に落ちる
2匹目の狼
翌日。
薄っすらと開けた目に広がる、朝の光。
ふわりと鼻腔をくすぐる、美味しそうな匂い。
私、いつの間に眠ったんだろう。
上半身だけをベッドから起こして、記憶を辿ってみる。
昨日は確か……。
いつものバーに行って、泣いて、店長さんとお話して、
家に連れてきたんだった。
「りーこさーん?起きてますー?」
ドアの向こうから聴こえる、昨日連れて来て同居人となった千景さんの声。
私、変な格好してないかな?!
あのまま寝たから髪がグシャグシャだということは、鏡を見なくても分かる。
「開けるでー?」
カチャ、と音がする。
もう何も出来ない。
……そうだ。
この際仕方ない。
「なんや、まだ寝とるん」
千景さんには悪いけど、ちょっとの間は寝たフリで時間を稼がせてもらおう。