赤ずきんは狼と恋に落ちる
まだ乾かしきっていないが、カチリとスイッチを切って、轟音を止めた。
思い切ってドアを開けると、両手に袋を提げている千景さんが居た。
「……っおかえりなさい!」
片方には、スーパーで買ったような食パンやら牛乳やらのごくごく普通で、日常品そのものが入っているのだが。
どうしても、もう片方の小さなコンビニの袋に目が行ってしまう。
「ただいま。りこ」
嬉しそうに笑って、私の名前を呼んでくれるのだけど、
……その私が、袋にばかり目が行ってしまうのだから、非常に残念。
考えないようにしているものの、先ほどの事が、ありありとフラッシュバックする。
「どうかしたん?」
立ち止まったままの私を、不思議そうな顔で見ている彼。
「い……いえ、何でもないです!」
慌てて首を横に振り、千景さんの持っているスーパーの袋を取って、早足でリビングへ向かう。
あまりにも挙動不審だ。
落ち着け、私……!