赤ずきんは狼と恋に落ちる
「珍しいなぁ。りこ、何か手伝おうか?」
にこやかに笑う千景さんを見ると、逆に変なプレッシャーを感じてしまう。
「大したものは作れませんけど……。いつも千景さんが作ってくれるので、今日は私が作ってみようかなって。千景さんは座って待っててください」
朝昼晩、毎食美味しい料理を作ってくれる彼の腕前には、到底及ばないけど。
今日ぐらい、出しゃばったことをさせてもらう。
「分かった」と一言だけ言うと、ソファーの方へ座った。
仕事のことばかり考えてきた私だが、本当はこういうのに憧れていた。
好きな人のためにご飯を作ってあげたり、
何の料理を作ろうかと、あれこれ考えてみたり、
味付けで迷ってみたり。
仕事以外の悩みが出来て、実はとても嬉しい。