赤ずきんは狼と恋に落ちる
立派で豪華なものは作れないけれど。
お母さんが私とちほに作ってくれたような料理は、私にも作れそうな気がする。
日常的で温かい料理や、質素だけどきちんと作られた料理。
力が入りすぎていて、危なっかしい手が、やっと落ち着く。
慣れた手つきでなくても、一つ一つ丁寧にする。
トントンと野菜を切る音も、沸騰しそうなお湯が、鍋蓋にカタカタと触れる音も、何となく馴染んだものになっていく。
すごくすごく、幸せだ。
ソファーに座って待っている千景さんの後ろ姿を、じっと見つめる。
喜んでくれたらいいな。