赤ずきんは狼と恋に落ちる
私よりも少しだけ高い、千景さんの体温。
妙に近くに感じすぎてしまって、またも逃げ出そうとする、往生際の悪い私。
それはすぐに阻止されてしまった。
「逃がさへん。りこ、まだ冷えてるし。……それに、寒くてくっついてきたの、りこやからな」
そう言って、背中を撫でていた手で両肩を包む。
「え?!邪魔でしたよね!ごめんなさい!!隣が温かくてつい……」
「邪魔と思ってたら、昨日あんなことせんやろ?おいで。まだ時間あるんやから」
千景さんの一言一言が、艶っぽさを含んでいて、顔だけが熱くなる。
慣れない甘さとくすぐったさにドギマギしながら、逃げ出そうとした身体を大人しく元に戻した。
「ん、イイ子」
後ろから嬉しそうな声と一緒に、ぎゅっと抱きしめてくれる。
冷えきった私を温め直してくれたのは、千景さんで。
私が彼の温度で溶けてしまったのは、当たり前のことだったのかもしれないとさえ、思ってしまう。
どうかこの温度が消えてしまわないで。
ベッドの傍に置いてある時計の針を見つめながら、
消えて欲しくない甘い切なさを、いっぱいに感じて目を閉じた。