赤ずきんは狼と恋に落ちる
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どうやら、二度寝してしまったようだ。
数分だけ目を閉じていたつもりだが、あれから1時間ほど経っていた。
隣に千景さんの姿はなく、代わりに昨日脱ぎ捨てたと思われる衣服類類が、きちんと畳まれてちょこんと置かれていた。
何だか自分のだらしなさや、女子力のなさを痛感してしまう。
その有難い心遣いに、またもお世話になる自分が言えるような言葉ではないけれど。
ベッドからやっと出て、無造作に掛けられているカーディガンを羽織り、顔を洗ったり、歯を磨いたりとした後に、そっとリビングのドアを開ける。
千景さんは私に気付いていないのか、黙々と料理を続けている。
ああ……。
やっぱり、素敵だな……。
未だに信じられない気はするものも、思い出して悪い気なんて全くしないし、自然と頬がふにゃりと緩んでしまう。
「おはよ、りこ」
視線で感づかれたのか、千景さんは、フライパンに向けていた顔を一瞬だけこちらに向けた。
「お、おはようございます!あの、服、ありがとうございました!」
「ああ、ええよ、そんな大したことやないし。ちゃんと温まった?」
「…は、い……。もう、大丈夫です。温めてもらった、ので……。色々と、ありがとうございます……」