赤ずきんは狼と恋に落ちる
朝食作りを手伝うものの、ただお湯を沸かすだけ。
朝からこんなにドキドキすることなんて、なかったから……。
後ろに千景さんが立っていて、黙々と菜箸を動かしている。
盗み見をして邪魔するのも悪いので、私も目の前の電気ポットを見つめる。
こんな風に、二人でキッチンに立つと、夫婦にでもなったかのように感じる。
全く、どこまでもおこがましい自分だ。
そう思いながらも、どこかくすぐったくて、嬉しくて。
ついつい顔がにやけてしまう。
お湯が沸いたのと同時に、千景さんと入れ替わる。
何でも、コーヒーは自分で煎れたいそうで。
私も「千景さん、」とだけ声をかけて、戸棚から食器を数枚出す。
お皿におかずを盛り、テーブルに準備をするのが私。
あまりにも千景さんに全部させてしまうのは、申し訳ないと、「気にしなくていい」の一点張りだった千景さんを押し切って、今やっとこの状態。
いつかは私が朝食も作れたら、と思うのだけれど。
……料理上手の千景さんには到底敵いそうにない。