赤ずきんは狼と恋に落ちる
視線を下へと移すと、食パンと目玉焼き、サラダにスープと、やけにお洒落なものばかり。
「これ、全部千景さんが?」
「ん。一応店出しとるから、コレぐらいは余裕や」
こんな朝食を、テレビの中でしか見た事が無い自分に虚しさを覚えつつも、じっと見つめてしまう。
「食べへん?食欲無いん?」
「いえ!…その、美味しそうだなって……」
両手と首を同時に横へ振ると、
「良かった」
とだけ言って、コーヒーを啜る。
そんな姿に惹かれながらも、小さく手を合わせて、「いただきます」と言う。
サラダを一口、食べてみる。
……やっぱり、美味しい。
それに、私好みの味。
「美味しい?」
コトリとコーヒーカップを置き、頬杖をついて訊ねてくる。
一度首を縦に振り、コクンと飲み込む。
「すごく、美味しいです」
朝から美味しいサラダを食べられて、しかも千景さんの手作り。
食パンに手を伸ばし、それも一口。
ゆっくりと噛みながら、ふと千景さんの方を見る。
パチリと目が合ってしまい、慌てて下を向く。
そんな感じの悪い私に対しても、笑ってくれるのだから、尚更目を合わせられなくなる。
食べ辛い……っ!!
粗相の無いよう気をつけているつもりだけど、こんな風に誰かに見られると……。
「りこさん、今日は日曜やし、天気もええからどっか行かん?」
下を向いてしまった私に対しての配慮なのか、突然のお誘いを受けてしまった。
「どっかに行かないか?」
=
まさかのデート
なんて、都合の良すぎる脳内変換を止め、食パンをお皿の上に。
「何か買いたい物でもあるんですか?」
「見たい物があるんや」
にっこりと笑うと、スッと立ち上がる。
「りこさん、俺もうちょっとマシなもん着てくるわ!りこさんは、そのワンピースで十分可愛いからそのまんまな!」
ニッと笑うと、自分の家のように歩いていく。
ワンピース、可愛いだって。
見てくれていたんだ。
それよりも、「可愛い」と言ってもらっちゃった。
照れてしまう。