赤ずきんは狼と恋に落ちる





火照った頬をテーブルにくっ付け、千景さんが出て来るのを待つ。



真横に映る店内は、千景さんと初めて話した夜のことを思い出させるみたいで。




クリスマスの夜に、人の優しさに触れたからか、何となく感傷的な気分になってしまった。






出逢ってもうすぐ4カ月。

千景さんは、いつから私のことを好きになってくれたんだろう。

どこを好きになったんだろう。




こんなことを訊くなんて、私には恥ずかしくてとても出来そうにない。


火照った頬を冷ますためにこうしているのに、これじゃあますます熱くなるだけじゃない。

今考えるのは止めよう。




空いた右手で片頬を煽ぐと、上からぴとりと冷たい指先が落ちてきた。




「千景さん……?」



掠れた声で名前を呼ぶと、指先が触れたところにふにっと柔らかい感触が残った。


唇だと分かると同時に、今度は氷のように冷たいものが触れた。




「冷たっ!」




突然触れた冷たいものに、ガバッと身体を起こすと目の前に真っ赤な液体が入ったグラスを差し出された。





「え?これワインですか?」




どこか違うような気もするけれど、さっき私が零したワインと似たような赤色。


グラスの形が違うのが引っ掛かる。




「ううん。でも、りこは前に飲んだことあるけど。分からん?」

「あっ……。苺ジュースですか?」

「正解」



コトンと置かれた苺ジュースに、思わず頬が緩んでしまう。

やっぱり今夜は、何かと感傷的になる夜だ。



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