赤ずきんは狼と恋に落ちる
「また読んでんの?」
「わっ?!千景さんっ!!」
後ろから頭を撫でられ、慌てて雑誌を閉じる。
「閉じなくてええのに」
千景さんは両手で挟んだ雑誌をヒョイと取ると、パラパラと捲って同じページをじっと見る。
「千景さん、すごく良く撮れてますよ」
ソファーの上に膝立ちし、写真を指差す。
「ほら」と顔を上げると、眉根に皺を寄せた千景さんが映った。
「千景さん?どうかしました?」
「この写真の俺、めっちゃ営業スマイルやな。不自然で気味悪い」
自嘲気味に笑いながら「おかしいなぁ」と言うのが信じられなくて、写真と本人を二度見する。
「これのどこが営業スマイルですか?!自然ですよ!イメージのままじゃないですか!」
「イメージ?」
訊き返されて、大きく首を縦に振ると、雑誌を奪い返して千景さんの目の前で広げる。
「こう……何というか、大人の男性って感じで!笑顔も素敵だし!!」
そう言い切って雑誌を下ろすと、意外と近くに千景さんが居た。
珍しく恥ずかしそうにしているのを見て、こっちも恥ずかしくなってしまう。
本人前に何熱弁してたんだろう、私。
写真ごときで。
膝立ちまでして。
何がしたかったの。
もしかしたら余計なことを言ったのかもしれない。
どうしよう、すごく恥ずかしい……!
今更ながら恥ずかしさが込み上げてきて、乾いた笑いで誤魔化すしかない。
顔を見せないよう俯こうとするも、既に遅く。
両頬を挟まれ、あっという間にキスされていた。