赤ずきんは狼と恋に落ちる
構ってもらいたい、
だなんて考えている自分が恨めしく感じる。
同居人は恋人じゃないんだ。
何を考えているんだ、私。
ぶんぶんと首を振り、邪な考えを消し去ると、上着を着かけた千景さんと目が合う。
にっこりと笑うと、玄関の方へ駆けてくる。
「ごめんなぁ。待たしてもうた」
「いえ、気にしないで下さい」
私も少しだけ笑ってみると、なんだかホッとした。
同居人でも良いじゃない、なんて。
ガチャリとドアを開け、鍵を閉める。
鍵をバッグに入れたところで、千景さんはじっと見てくる。
「どうしたんですか?」
「や、俺も鍵作らなあかんなーって思ただけや」
それはつまり、合鍵?
「つ、作った方がいいですか?」
「バーの閉店時間が遅いしなぁ……。りこさんも会社に行かなあかんから、寝てるとこ邪魔しちゃ悪いやろ?」
そう言って、腕時計をチラリと見る。
「よし!今日は鍵作りに行こ!りこさんそれでもええ?」
コクンと頷くと、「あっ」と呟く。
「あと店の買出しにも付き合うてほしいんや」
顔の前で両手を合わせ、困ったように笑う。
昨日の印象とは一転、今日の千景さんは可愛らしい。
「はい!」
と、威勢の良い返事をし、エレベーターへ向かった。