赤ずきんは狼と恋に落ちる
……。
距離が近すぎて、ろくに話も出来ない。
昨日は、慰めてもらったり、手を繋いでもらったり、
……また慰めてもらって。
昨日のあの時よりも至近距離じゃないけど、エレベーターの中じゃ妙に緊張してしまう。
「りこさん?さっきからずっと下ばっか見とるけど、体調でも悪いん?」
「そ…、そんなことないです!いつも通りですよ!」
またやってしまった。
ああ、もう嫌だ……。
「もしかして、緊張しとるとか?」
「えっ?!」
驚いて目を見開くと、ふいとそっぽを向かれる。
「ごめん、俺浮かれとったわ」
手の甲を口元に当て、宇佐城さんは下を向く。
「なんや……デートみたいやんな思うて」
一瞬、言葉を疑う。
今「デートみたい」って言ったよね?
私の方が浮かれちゃいそうだ。
じっと千景さんの方を見ると、チラリと見つめられ、思わず笑う。
恥ずかしいはずなのに。
嬉しい。
早く1階に着いてほしいと思っていた。
だけど、あともう1分だけ。
この甘美な心地好さに浸りたいと思いながら、点滅している2の文字を静かに眺めた。