赤ずきんは狼と恋に落ちる
しがみつくように、ぎゅっと抱きしめる。
ゆるゆると背中から力が抜けていくのを感じ、ぎこちなくぽんぽんと叩くと、千景さんも背中に腕を回してきた。
「千景さん、ずっと、頑張ってきたんですね」
拙く話す私に、千景さんは、言葉を促すように髪を撫でる。
「話してくれて、ありがとうございます。あと、余計な詮索して、ごめんなさい」
もう一つ。
浮気してるんじゃないかって、疑ってごめんなさい。
さすがにこれは言えないな。
そんな馬鹿なことを疑った自分が、恥ずかしくて、今は千景さんの顔を見れない。
顔を隠すようにもっとくっつくと、肩をぎゅうっと抱かれた。
「こんなに甘えてもええんやろか……」
耳元で響く甘くて苦しい声に、くすぐったさを感じる。
心地好くて、こくんと頷いた。
「甘えていいんですよ。私、千景さんに甘えっぱなしなんですから。千景さんは、ちょっと、頑張りすぎです」
顔が見えないからこそ、言えたんだと思う。
話を聞いて、抱きしめるくらいしか出来ないけれど、少しでも千景さんを慰めることが出来ているのだろうか。
「りこ、ありがと……」
その一言で、私も報われたような気がした。