赤ずきんは狼と恋に落ちる
おじいさんの悲しげな笑顔を見た後、何て声をかけたらいいのか分からなくなった。
もしかして、「良くなりますよ」なんて軽々しく言うべきじゃなかったかもしれない。
余計なこと言っちゃったな……。
窓の外をじっと見つめるおじいさんに隠れてこっそり溜め息を吐いた。
バス停に着くと、おじいさんはゆっくり立ち上がって歩き始めた。
シャンと背筋を伸ばしてしっかりと歩いているおじいさんを見、私もその後に続いた。
「病院はどこにありますかね?」
「ええと……あの信号を渡って右に曲がった所です」
「ありがとう。私も久しぶりに花でも買って見舞おうと思ってね。じゃあまたいつか」
「はい。さようなら」
ぺこりと頭を下げ、身体を起こすと、おじいさんはゆっくりと病院と反対方向へ歩いていた。
いつかまた会った時、おじいさんも息子さんも良くなっていたらいいな。
そう思いながら、私は病院の方へ歩き出した。