赤ずきんは狼と恋に落ちる
唇から伝わる熱が、切なかった。
上唇、下唇、頬、鼻、瞼へと触れる度に、ポロポロと涙を零す。
「ごめん、りこ。本当に、ごめんな……」
揺れる瞳に映る私が、ひどく悲しげで。
「もう……言わないで………」
千景さんの両目を手で覆って、唇を塞いだ。
これ以上、自分自身を責めるのはやめてください。
これから、また頑張っていくんでしょう?
私のことはいいから。
千景さんが良い方向へ進められるよう、遠くから祈るぐらいが、私には丁度良いんだから。
望みを言うなら、
「私のこと、ちょっとは覚えててくださいね?」
ずるくて、未練がましい、最後の我侭だ。