赤ずきんは狼と恋に落ちる
「ありがとうございます」
嬉しかった。
頑張って書いてみて良かった。
この嬉しさのきっかけが、千景さんとの別れということが何とも言えないけれど。
マイナスの言葉を飲み込み、柔らかく笑う。
「とてもやりがいのある仕事ができたので、私も良かったです。お姉さんの方にも、伝えておいてください」
「分かった」
「またおいで」と手をひらひら振る芳垣さんに、ぺこりと頭を軽く下げて店を出た。
7月上旬。
もう26歳になる。
だんだんと夏らしくなっていく空気を感じながら、「何か自分へのプレゼントを買おう」と浮かぶように歩いて帰った。