赤ずきんは狼と恋に落ちる
赤ずきんは狼と恋に落ちる
――今日という日は、最悪な日だった。
昨年の9月から任せられたコラムの仕事が板に付いてきたと浮かれていた矢先、いつもはしないようなミスを連発、久しぶりに怒られた。
少しブルーな気分になっていた直後、まだ仕事に慣れていない新入りさんがコピーの部数を間違え、私が一からやり直した。
エレベーターは止まる、自動販売機でミルクティーを押したはずなのに、何故かトマトジュースが出る、残業を押し付けられる。
極めつけは、大雨と人身事故による電車の遅れ。
こんな大雨だったら、織姫と彦星も大変だろうなあと、半ば同情、半ば「それ見たことか」と嘲るような気持ちで、真っ暗な空を見上げていた。
やっと最寄り駅に到着したとほっと一息し、傘を広げると、突風で骨が4本折れた。
どうしよう、泣きたい………。
骨が折れた傘を差し、びしょ濡れになって音が鳴るパンプスをよろよろと引きずりながら、やっとマンションの下まで着いた。
最悪だ。
そろそろ27歳の誕生日が迫っているというのに、何だこの不運の連続は。
波風立たぬよう大人しく大人しくしているのに。
最近仕事が上手くいっていると、少しだけ天狗になっていたのかもしれない。
1年と4カ月何も浮ついた話もなく、自宅と会社の往復、時々エトランゼに寄る程度だった。
去年は芳垣さんが誕生日を祝ってくれたっけ。
あれは有難かったなあ。
今年彼は絵本作家として、日本全国の書店でサイン会をしている。
お姉さんの方は、エッセイストとして、「大人の女性の恋愛」関連の本を出版し、彼女も忙しいらしい。
今年は一人。
ああ、結構寂しいものなんだ……。