赤ずきんは狼と恋に落ちる
鍵を作り終えた後、近所のスーパーに立ち寄って、千景さんの買出しのお手伝いをした。
「りこさん」
カートを引く手を止め、右を指差す。
「りこさんのとこの冷蔵庫に入ってたドレッシングって、ここで買ったやつ?」
「そうですよ」
両側の棚には、ずらりと並ぶ調味料類。
スーパーのものにしては、意外と美味しくて、よく買っている。
「ここ、いっぱいあるんやなあ……」
無意識に上を向いて歩く千景さんは、どこか嬉しそうだ。
「りこさん家にあったドレッシング、俺も気に入ったから買っとこうかなって思てたんや」
気に入ったんだ。
何となく嬉しい。
「待っててください。今取ってきますので」
場所を大体把握している私は、急いでそこへ行く。
「これですよね」
千景さんの元へ戻ると、「そうそう」とふわりと笑う。
「ありがとなぁ、りこさん。
俺、これからりこさんと買出しに行くことにするわ」
「えっ?いいんですか?!」
びっくりして、思わず大きな声を出してしまった。
恥ずかしい。
そんな様子を見た千景さんは、軽く笑いながら、「ええに決まっとるやろ?」と、言ってくれた。