赤ずきんは狼と恋に落ちる
用事という用事は全くない。
ここ1ヶ月間、家に千景さんが待っているという理由だけで、仕事が終わったらすぐに家へ帰っていた。
「最近、佐々木を誘おうとしてもすぐに居なくなっちゃうし……。彼氏でも出来たの?」
「そんな!!彼氏なんて……!とんでもない!!」
首と両手を同時に横に振ると、渡部さんはケラケラと笑う。
「そんなに否定しなくってもいいのに!佐々木って、どこか可笑しいんだから」
「あ、ははは……」
「それどういう意味?」なんて訊ける訳もなく。
へらっと笑ってみせ、徐に携帯を取り出す。
いつも私が帰ってくるのを待ってくれ、その後にバーへと行く千景さん。
今日は遅くなると、連絡しておこう。