赤ずきんは狼と恋に落ちる
――翌日。
昨日の一件で、色々考えたりもした。
が、私は最終的には千景さんのことばかり考えてしまっている。
あれは、私が泣いてしまったからであり、別に好きだのどうだのという問題ではない。
それは千景さんが優しいだけだ。
勘違いしちゃいけない。
自分に「勘違いするな」と言い聞かせ、部屋のドアを開ける。
「あ……」
ドアを開けると、目の前いっぱいに千景さんが映る。
「お、おはよ。りこさん」
「おは……、おはようございます。千景さん」
あれだけ自分に言い聞かせた筈なのに、顔を見た途端、視線を逸らす。
何とも言い難い、妙な空気が流れていく。
チラリと上を向くと、千景さんも困ったように手を口元に当てている。
「……朝ごはん、出来とるから。冷めんうちに食べにおいでな」
それだけ言うと、くるりと背を向けてリビングの方へ行ってしまった。
……。
やっぱり、気まずいなんてものじゃないよね……。