赤ずきんは狼と恋に落ちる
本当に、自分が情けない。
逃げるように家を出て、会社に到着。
昨日は連絡の取り方、今日は昨夜から今朝までのこと。
「帰りづらいな……」
大きな溜め息を一つ落とすと、後ろから肩を叩かれた。
「佐々木さん!」
「え?」
振り返って見てみると、申し訳なさそうな顔をした島上さんが居た。
今、あんまり会いたくないんだけどな……。
「おはようございます……」
「おはよ。
……昨日は、ごめん」
頭を小さく下げ、謝ってくる。
「あっ、そんな、もういいですよ。私、全然気にしてないので」
「全然って……。それはそれで結構ショックだけど」
ああ……。
やってしまった。
「いや、俺が一方的すぎたって言うか……。うん。
佐々木さんが嫌がってたのに、無理にして、ごめん」
そんな風に謝られると、もう許してしまいそうになる。
いくら嫌だったとは云え、彼もこんなに謝っている。
昨日のことは水に流すべきだ。
「島上さんが疲れていただけですよ。もう、お互いにこのことは忘れません?」
「……そうだね」
不服そうな顔が気になるが、この話はこれでおしまい。
もう蒸し返す必要はない。