赤ずきんは狼と恋に落ちる
「そういえばさ、佐々木さんを連れていったのって、もしかして彼氏?」
「いいえ」
やっぱり来ると思った。
それは仕方がない。
彼なら、私と芳垣さんの関係も色々と訊いてくることだろう。
それなら、私から答えなきゃ。
「彼は知り合いです。
面倒見が良くて、優しい」
ただ、それだけの関係。
「知り合い」なんて言葉では済ませないほど、お世話になっているのは私の方だけど。
「そうなんだ」
「はい」
彼にはそれだけを言っておこう。
ペラペラと喋っても、何も意味がないのだから。
「じゃあ、私はこれで失礼します」
小さく会釈して、その場を後にする。
その時に、チラリと島上さんの声が聴こえた。
「……俺から見ると、彼も佐々木さんのこと、気になってそうだけどね」
そんなはずはない。
絶対に、違う。
「それはないですよ」
島上さんの言葉を笑い飛ばし、さっさと自分のデスクに戻った。