赤ずきんは狼と恋に落ちる
「そう、です……」
「りこさん、妹さんが居るんやなぁ。
もしかして、こっちに来るとか?」
その通りです。
「……はい」
不安で頭がいっぱいな私を、千景さんは可笑しそうに笑う。
「そんな顔せんでええやろ?まだ時間もあるやろうし……」
「いえ……、もう、下に来てる…」
ピンポーン。
来ちゃった。
インターホンの音が虚しく響きわたると、さすがに千景さんも困ったのか、「え?」と尋ねてくる。
「下に、妹が居るんです……」
「嘘やろ……」
私たちの茫然とした声とは裏腹に、未だにインターホンは元気な音を立てている。
誤魔化すか、バラしてしまうか。
「りこさん、俺、今日は外に出とくわ……」
「でも……」
「お姉さんの家に、見ず知らずの居候の男がおったら、びっくりするやろ?」
それはそうだけども。
「別に、恋人でもないんやし」
そう言うと、パタンとドアが閉まった。
千景さんの口から出た、その言葉。
分かっているつもりだったのに。
グサリと、心の奥深くに突き刺さってしまった。