赤ずきんは狼と恋に落ちる



傷ついている暇はない。


私もすぐに立ち上がり、インターホンのボタンを押す。




「お姉ちゃん?入ってもいいの?」

「うん。おいで、ちほ」



ブツリ、と切れる音。


私の心みたい。



なんて、私らしくない表現。





数分経つと、玄関には大荷物のちほの姿。



「お姉ちゃん、久しぶり!少しの間、お世話になります!」

「え……?」



大荷物の彼女を見たところ。


何となく、予測は出来た。





「家出、とかじゃないよね……?」

「ううん、家出だよー」






何でこうなっちゃったんだろう。





「ちゃんと仲直りするよー?
ただ、ちょっと時間が欲しいだけ」



出来れば今すぐに仲直りしていただきたい。


親と喧嘩しては、私のところに来るちほ。

たった一人の妹だもの。



そのたった一人の妹が、こういう時に限って頼ってくるのは、私だ。





「……落ち着いたら、ちゃんと話してみるんだよ?」





4つ離れているちほに、私もついつい甘やかしてしまうのだ。


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