赤ずきんは狼と恋に落ちる
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「オシャレなお店だね。ここに用でもあるの?」
初めて来たちほは、物珍しそうにドアを見ている。
「うん。入ろっか」
ここへ来るのは慣れているはずなのに。
何だか、ドアを開ける手が震えてくる。
カランカランと響く、聴き慣れたベルの音。
私たちに気づいたのか、千景さんはこちらに向けて笑顔を浮かべる。
「いらっしゃいませ。りこさん」
「こんにちは」
軽く会釈して、店内へ進んでいく。
ちほは、2,3度私と千景さんの顔を見て、「知り合いなの?」と訊いてくる。
「うん」とだけ答えると、千景さんは、私たちに座るよう促す。
黙ったままの私の背中を押すかのように、温かいココアをそっと出してくれた。
「あのね、ちほ。
話したいことがあるの」
ちほには、ちゃんと教えなきゃ。
ふっと一息吐き、ちほを真っ直ぐ見つめる。
「実はね――」