赤ずきんは狼と恋に落ちる



***



「オシャレなお店だね。ここに用でもあるの?」



初めて来たちほは、物珍しそうにドアを見ている。




「うん。入ろっか」




ここへ来るのは慣れているはずなのに。

何だか、ドアを開ける手が震えてくる。




カランカランと響く、聴き慣れたベルの音。

私たちに気づいたのか、千景さんはこちらに向けて笑顔を浮かべる。




「いらっしゃいませ。りこさん」

「こんにちは」



軽く会釈して、店内へ進んでいく。

ちほは、2,3度私と千景さんの顔を見て、「知り合いなの?」と訊いてくる。



「うん」とだけ答えると、千景さんは、私たちに座るよう促す。



黙ったままの私の背中を押すかのように、温かいココアをそっと出してくれた。




「あのね、ちほ。
話したいことがあるの」




ちほには、ちゃんと教えなきゃ。


ふっと一息吐き、ちほを真っ直ぐ見つめる。




「実はね――」



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