赤ずきんは狼と恋に落ちる
全部、全部。
何一つ隠さずに、ちほに話した。
疾しいことは何もないけれど、何となく話せなかったとか。
「分かってもらいたい」とは思いつつも、ちほに隠していたこと。
「ちほ、ごめんね……」
最後に、ちほへの謝罪。
チラリとちほの顔を見ると、口を開けて、目をパチクリとさせている。
そのまま黙って見ていると、ココアを一口だけ飲み、テーブルに戻す。
「何、それ」
カチャン、とその場の沈黙を破るかのように、カップが音を立てた。
それと同時に向けられた、ちほの悲しそうな瞳。
「ちほ……?」
「私にバレるのが、そんなに嫌だったの?」
「そういう訳じゃな……」
「そういうことなんでしょ」
鋭いちほの言葉が、耳を貫いていく。
「私には、言いたくなかったの?私がペラペラと喋りそうだから?
……離れてても、私にぐらい、もっと早く話してほしかった」
ガタッと椅子が引かれ、ちほは黙ってバッグを持つと、ドアの方へ歩いていく。
「……ごめん、ちょっと考えてみる」
そう言って、外へ出てしまった。