赤ずきんは狼と恋に落ちる
「もしもしっ?千景さんですか?」
メールを読み終わった瞬間、千景さんに電話をかける。
『りこさん?今どこに居る?』
「マンションの近くです。今からお店の方に行きますね」
『分かった。あ、ちょっと待って』
電話を切ろうとした直後、千景さんからのストップ。
「はい?」
『電話、切らんどってもらえん?』
「え、何か用事でも……」
『ええから。繋いだままにしとって』
久しぶりに聴く、千景さんの声。
「分かりました」とだけ残し、電話を繋げたまま歩き出す。
何秒か、ガサガサと聞こえ、コツッと音がした。
電話をどこかに置いたのかな?
耳をすませ、ゆっくりと歩く。
すると、
『この前は、すみませんでした』
聴き慣れた、ちほの声が電話から聴こえてきた。